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医療コラム
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当院では開院前から脳神経外科診療以外に「脳ドック」をするかどうか、という議論がありました。人間ドック、脳ドックという言葉は自由診療のため各施設で勝手に内容が決められています。脳関係でも様々な用語が散見されます。「スマート。。。」「プレミアム。。。」「物忘れ。。。」などなど、そして厄介なのは人間ドックのオプション項目にも高頻度で含まれるということです。
1980年代、MRIの登場とともに脳の検診が始まったようです。1992年には日本脳ドック学会が設立され、用語の規制や内容の標準化がなされ30年以上が経過します。残念ながら、今回私が調べた限りでは脳ドック学会の意向とは関係なく脳ドックという用語は広まっています。
脳ドックの広まりについては一つ要因があります。MRIの会社(ドイツ、アメリカ、オランダ、日本製)が日本を世界一のマーケットとして販売してきたこと。その結果として日本は米国に次ぐMRI装置保有国となっています。人口で割れば世界一であることは間違いありません。そして、日本の医療費が安いこともMRIへアクセスの良さの理由になっています。
ところで、当院で脳ドックを宣伝しなかった理由は、脳ドック学会が推奨する1.5T(テスラ)以上のMRI装置ではないこと、私が脳ドック学会の認定医ではなく今後も加入予定がないことが挙げられます。しかし、開業してMRI撮影を繰り返すうちに、当院の0.4T永久磁石MRI装置の画像は1.5T超伝導MRI装置の画像と遜色ない撮影ができることがわかりました。そして、オープンMRIの利点を活かした内容で社会貢献することにしました。
まず、脳ドック学会ではMRIのみ実施する場合は「脳検診」「簡易脳ドック」と名付けること、と明記されているのでそうしました。そして、症状がある場合、所見がある場合は保険診療としました。MRIの保険点数は1.5T未満だと低いので、金額も安くしました。その結果、脳検診希望で来院する方はいましたが、1名以外は症状があったため保険診療としました。
現在、近隣の脳ドック実施施設を調べています。私が判断して疑問がある内容として「脳神経外科専門医が対面で結果説明していない」「頭部CTのみ撮影で血管を調べていない」「脳のMRIは外注で実施します」「頭痛脳ドック、めまい脳ドックなど症状を冠している」などの脳ドック実施施設が見つかっています。そのような施設には当院のMRI実施ご案内を送る予定です。各施設の脳ドック内容まで切り込む訳ではありませんが、オープンMRIで撮影した画像をつけてスクリーニングは十分に可能であるということ、子供にも実施できる広く静かな装置であることなどです。
世界標準で考えれば、ちょっと心配だからMRIを受けよう、という行動自体が間違いとも言えますが、クリニックを運営する上で、患者さんに対してベストな医療が提供できるように機器を揃え、脳神経外科について入院と手術以外は当院で大丈夫です。という都心での新たなクリニックモデルを周知するための作業はまだまだ必要なのかな?と思っています。