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医療コラム
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先週の土曜日に特発性正常圧水頭症のセミナーがありました。開催場所がクリニックの隣だったことと、VAシャント(脳室ー心房シャント)術について、前病院の後輩が発表することになっていたため、オブザーバーとして出席しました。座長の鮫島先生、中島先生は共に同年代でした。水頭症の業界には重鎮の先生方がいて(どの分野でもそうですが)なかなか発言が難しい中で存在感を示してきた先生方であり、やっと主役の座を得てきた状況といえます。
内容についてはどうということはなく、各術式のトピックス的な話でした。VAシャントについては我々の年代では私は一番多く経験しているため、何か質問が出るかな?と思いましたが、多くの先生方がLPシャントを実施していて、VAシャントはあまり興味ないようで質問も圧設定に関するオーソドックスな内容のみでした。
会が終わってから懇親会があり、その後何名かがクリニックの見学にも来てくれました。皆さん、当クリニックの立地やMRIなどの設置に驚いていただいて、連携もしていただけるようなお話でした。いつも、会った先生方は皆さん「連携しましょう」と言って下さるので、実際に連携が継続するのは1%程度の医療機関であることを考えると、今後に期待したいところではあります。
iNPHというのは「特発性正常圧水頭症」という病気のことで、脳神経内科医、放射線科医の中でも認識が薄い疾患でかつ、脳神経外科医でもあまり評価や手術まではやってない人が多い疾患でもあります。位置付け的には「頭痛」や「認知症」に近いものがありますが、脳神経外科医でこれら疾患を専門にしている人は少ないです。
いわゆる治る認知症と言われる疾患ですし、歩行障害を主訴にする場合はこの水頭症、脊椎脊髄疾患とパーキンソン病のような神経疾患と鑑別しないといけません。鑑別する上で重要なポイントで画像検査の時に冠状断(Coronal)スキャンしたものが役立ちます、当院ではルーチン画像に含まれていますが、通常施設だと横断(Axal)スキャンが一般的なので見逃す可能性もあります。
いずれにしても、認知機能低下(物忘れ等)と歩行障害が気になる場合は一度ご相談いただければと思います。ちなみに、前職の救急中心で見ていた脳神経外科では、救急外来で頭部外傷による受診をした高齢者に発見することが最多でした。転ぶまで診断されない疾患であり、運ばれた施設により診断されない疾患でもありますのでご注意下さい。
(MRIのCoronal view:国立長寿医療研究センターホームページより転載)