右左

今週、上記画像の方が来院しました。５０歳代後半の男性で外傷の既往なし。後頭部が痛いけど、過去に頭痛持ちではない、右手が少し痺れますと。。。歩いて来院。症状的にはよくある話でしたが、検査したら左慢性硬膜下血腫でした。正中偏位（中心が正常側に移動していること）あり、脳溝消失（シワが見えなくなっていること）あり、圧迫が強いことを示唆します。

症状は、ほとんど麻痺もないし言語障害（左側に言語中枢がある）もありません。患者さんには重症感がないので、こういった場合は一番注意が必要です。研修医がみて「明日報告しようと思った」というケースで夜間に急変とかありますし、患者さんが帰りたいと言って外来フォローしたら救急搬送されたとか、事例があります。

脳は不思議な組織で、徐々に圧迫されるとほとんど症状が出なくて、極限状態まで頑張ってから突然症状悪化します。ですから、病院の状況が許す範囲で準緊急で手術をした方が良いです。この患者さんは午後３時頃の来院だったので、自分がお願いしてすぐに手術してくれるところを優先しました。

昔一緒にやっていた先生が部長をしている病院がそういう時はベストです。私が出入りしている病院を含め複数の選択肢がありましたが、自宅近くの病院を希望したため紹介状を作成して、送り先の先生と手術室に連絡し、スムーズに受け入れてもらい無事に手術は終了しました。

頭部外傷の患者さんには、注意書きを渡してこの慢性硬膜下血腫には注意するようにご説明しています。先日、念の為に来院した８０歳代の女性にもこの血腫を認めましたが、圧迫所見はなかったので外来経過観察中です。実際に頭部外傷後にこの病気になる方は１００人に一人もいないと思いますし、今回の患者さんのように外傷の認識がない方もいます。

症状だけで大丈夫と言わず、頭痛があるかた、しびれやめまいがある方は脳の検査をお勧めします。特に慢性頭痛がある方は一度検査して異常がなくても、別の問題が発生している可能性もあるので、いつもと違う場合は検査をお勧めします。